無価値な落書きと揶揄される引っ込み思案な令嬢が好きな人のために自分を変える話

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 子爵家の長男リックは、ミリーとは対照的に快活な性格で、どこにいても周囲を明るく照らすような存在だった。  彼は子爵の息子として多くの社交の場に顔を出し、誰とでも親しくなれる性格だった。  冗談も言うけれど、人を傷つける冗談や揶揄はけっして言わない。  友人や使用人の体調が悪そうなことにもすぐに気づき、さり気なく声をかけるような青年だった。  ある日、リックは仕事の関係で、王立の図書館にいた。  そこで「無名作家の落書き」と呼ばれる令嬢ミリーを見かけた。  ミリーは司書に丁寧な物腰で話し、深々とお辞儀をする。  重そうに本を抱えている老人の手助けをしていた。 「口数が少ないだけで、とても優しい子じゃないか」  リックはそれから夜会でミリーを見かけると、率先して声をかけるようになった。  
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