無価値な落書きと揶揄される引っ込み思案な令嬢が好きな人のために自分を変える話

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 ある朝、ミリーは一人で庭を歩きながら、リックのことを思い出していた。  前夜の舞踏会で話しかけてくれたリックのの明るい笑顔や、落書き呼ばわりされるようなミリーにも優しく接してくれたことを思い出すたびに、胸が温かくなった。 「リック様のような方が夫なら、どんなに素敵だろう。でも、私のように後ろ向きな人間が妻では、リック様の恥になってしまう。例え話でも失礼ね」  夜会に参加する令嬢たちはみんな、美しいだけでなく社交的で気配りもできる人ばかり。  そんな才色兼備な令嬢がいるから、ミリーが選ばれる可能性はゼロ。  けれど、リックの隣にほかの令嬢が並ぶのは、リックが誰かと結婚するのは、想像して苦しかった。  きっとリックの結婚式に参列しても、「おめでとうございます」と心から祝福できない。  なら、努力しよう。 リックに好いてもらえるような、隣に立って恥ずかしくない良い女になろう。ミリーは決意した。
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