1.溶けゆく赤

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「さあ……。私もここ最近の様子までは分からないわ」 「あら、どうして? あれだけ仲がよろしかったのに」 「会いに行っても門前払いされたから」 「門前払い?」 「会いたくない、と」 「会いたくと言われて大人しくしているだなんて。無理矢理、会いにいけばいいじゃない」 「どれだけ仲が良くても、茉莉花が嫌がる以上、軽率に踏み込めないわ」  困ったように睫毛を伏せた司馬冬妃を、葉夏妃は冷めた目で一瞥した。 「ふぅん。司馬冬妃だけは特別なのかと思っていましたわ。お二人は恋仲に見えるほど、仲がよろしかったから」  朗らかな声音だがひどく刺々しい。 「同郷だから。ここじゃ、誰よりも信用できるから仕方がないわ」  司馬冬妃は葉夏妃の態度に微かな苦笑を浮かべながらも、毅然(きぜん)とした態度を崩さなかった。葉夏妃の言葉の裏に潜む嫉妬や疑念を感じ取りながらも、それを無視して会話を続けた。 「君は分からないと思うけど」  葉夏妃は鋭い眼光で司馬冬妃を睨みつける。その瞳の奥には何かしらの計略がちらついているように見えたが、それを指摘するのは無粋だと紫苑は判断し、仲裁のため、声をかけた。 「故郷から遠く離れた地では、確かにお互いの存在は尊いものだわ。気心知れた相手なら特に。……それでね、話を戻すのだけれど、後でお茶会を開こうと思っているの。姫春妃には挨拶ついでに直接声をかけに行ってみるわ」 「まあ、素敵なお誘いありがとうございます。崔皇后陛下とご一緒にだなんて僥倖(ぎょうこう)ですわ」 「ふふっ、喜んでもらえて嬉しいわ。みんな、ぜひ参加してね」  ええ! と葉夏妃は頷く。司馬冬妃に向けられていた苛立ちは嘘のように消え去り、にこにこと笑う。可憐な容姿と相まってなんとも可愛らしい。
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