22人が本棚に入れています
本棚に追加
/56ページ
「さあ……。私もここ最近の様子までは分からないわ」
「あら、どうして? あれだけ仲がよろしかったのに」
「会いに行っても門前払いされたから」
「門前払い?」
「会いたくない、と」
「会いたくと言われて大人しくしているだなんて。無理矢理、会いにいけばいいじゃない」
「どれだけ仲が良くても、茉莉花が嫌がる以上、軽率に踏み込めないわ」
困ったように睫毛を伏せた司馬冬妃を、葉夏妃は冷めた目で一瞥した。
「ふぅん。司馬冬妃だけは特別なのかと思っていましたわ。お二人は恋仲に見えるほど、仲がよろしかったから」
朗らかな声音だがひどく刺々しい。
「同郷だから。ここじゃ、誰よりも信用できるから仕方がないわ」
司馬冬妃は葉夏妃の態度に微かな苦笑を浮かべながらも、毅然とした態度を崩さなかった。葉夏妃の言葉の裏に潜む嫉妬や疑念を感じ取りながらも、それを無視して会話を続けた。
「君は分からないと思うけど」
葉夏妃は鋭い眼光で司馬冬妃を睨みつける。その瞳の奥には何かしらの計略がちらついているように見えたが、それを指摘するのは無粋だと紫苑は判断し、仲裁のため、声をかけた。
「故郷から遠く離れた地では、確かにお互いの存在は尊いものだわ。気心知れた相手なら特に。……それでね、話を戻すのだけれど、後でお茶会を開こうと思っているの。姫春妃には挨拶ついでに直接声をかけに行ってみるわ」
「まあ、素敵なお誘いありがとうございます。崔皇后陛下とご一緒にだなんて僥倖ですわ」
「ふふっ、喜んでもらえて嬉しいわ。みんな、ぜひ参加してね」
ええ! と葉夏妃は頷く。司馬冬妃に向けられていた苛立ちは嘘のように消え去り、にこにこと笑う。可憐な容姿と相まってなんとも可愛らしい。
最初のコメントを投稿しよう!