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そうして、暫く思い切り泣いた後、俺はマリアが作ってくれた食事を口にする。
彼女曰く、俺は三日も寝たまま起きなかったらしい。
だから、俺が起きた時、彼女はあんなに喜んだのだろう。
(ハズレスキル持ちの俺でも……こんなに大切に思って、目が覚めるのを待ってくれてる人がいるんだな……)
――それは、なんて有り難い事なのだろう。
俺はマリアの存在に心から感謝しつつ、彼女と一緒に、久し振りの食事をとった。
マリアお手製の野菜スープにサンドイッチは、屋敷で食べる料理程食材は豪華ではないし、量も多くはないが……それでも、胃だけではなく心まで温もりで満たされる様な気がした。
その後、食事を終え、マリアと談笑する俺。
マリアが言うには、この小さな一軒家はマリアの親族の持ち物で、彼女の隠れ家みたいなものらしい。
「寂しくなったり、一人でどうしても泣きたくなった時は、いつもここに来ていたんです」
マリアはそう言ってふわりと微笑んだ。
彼女の背後の窓の外は真っ暗で、時刻はもう夜になっていることがわかる。
(これから、どうしようか……)
俺は、窓の外の闇を見つめながら小さくため息を吐いた。
(もう、家には帰れないよな)
いや、帰ったところであの長兄が今度こそ俺を殺しにかかって来るだろう。
そうなったら、俺はいっかんの終わりだ。
(……嫌だ。俺はまだ、死にたくない)
マリアに助けられる直前、襲いかかって来た兄の業火とその熱さを思い出し、俺は小さく身震いをした。
そんな俺を心配そうに見つめるマリア。
「出来る限り手当はしたのですが……火傷、まだ痛みますか?」
マリアの言葉に己の肉体を見てみると……成る程、確かに兄に負わされた火傷には全て丁寧な手当がされ、包帯が巻かれている。
(何から何まで……本当に、マリアには感謝しないとな)
俺は包帯にそっと触れると、次に、マリアに向かって微笑んだ。
「ありがとう、マリア。今、俺が生きていられるのはマリアのおかげだ。感謝してるよ」
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