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「マリア?!」
俺は思わず悲鳴じみた声を漏らすと、彼女に駆け寄ろうとする。
しかし――。
「近寄らないで!」
幼さの残る甲高い少女の声が、鋭く俺を制した。
「これ以上近寄ったら、この子の上半身を握り潰すわよ」
そう言いながら、大きな右手の向こう側から姿を現したのは――なんと小柄な少女だった。
見た目は8歳程だろうか。
明らかに俺より年下に見える彼女は、金糸より鮮やかな腰まである長い金色の髪を頭のてっぺんでツインテールに結い上げ、新緑を思わせる翠色の瞳をしていた。
沢山のレースやフリルやあしらわれた愛くるしいピンク色のワンピース――その裾をひらひらとはためかせ、空中に浮かんでいる少女。
よく見ると彼女の長い髪の幾房かが伸びて天井や柱に蜘蛛の巣の様に絡みつき、彼女の肉体を浮かせている様だった。
しかも、更に目を凝らして見ると――マリアを今にも握り潰そうとしている巨大な手も、どうやら少女の髪で出来ている様で……。
(まさか、この子も能力者……勇者、なのか……?)
俺は、突然の――見るからに強力そうな能力者の登場に、唇を噛んだ。
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