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「はぁ?」
俺の発した言葉に、明らかに不満で不愉快そうな声を漏らす少女。
彼女は悠然と腕組みをすると、イラついた様な表情で俺を睨みつけてきた。
「あんたねぇ。幾らこの女を助けたいからってそんな見え透いた嘘が通用すると思ってるの?」
どうやら彼女は、俺の言葉を全く信じていないらしい。
(まぁ、そうだよな。杉沢家は代々優秀な勇者を輩出してきた世界の中でも指折りの名家だ。そんな家の息子が、自分は無能だなんて言っても信じてくれないよな)
我ながら下手を打ってしまったかもしれないと俺は内心舌打ちをする。
すると、俺が嘘を吐いたと完全に思い込んでいる少女が、マリアを握る手に力を込めてきた。
「あぁぁっ……?!」
痛みに顔を歪め、苦悶の声を漏らすマリア。
「マリア?!止めろ!止めてくれ!!俺は本当に無能力なんだ!!何の力もないんだよ!だから、彼女を解放してくれ!頼む!」
俺は苦しみに喘ぐマリアを見ている事が出来なくて、両手を地面につくと土下座をし、床に頭を擦り付けて少女にそう懇願した。
瞬間、
ゴッ!!!
鈍い音がして、俺の頭を激しい衝撃が襲う。
どうやら目の前の少女が別の髪の束を凶器に変え、俺の頭を殴りつけて来たらしい。
そうして、そのまま――強い力で頭を髪に押さえ込まれてしまう俺。
俺は床に頭をめり込ませそうになりながら、それでも少女に哀願し続けた。
「マリアは関係ない!彼女は俺とは関係ないんだ!」
すると、そんな俺の様子を見ていた少女が……口の端にニヤリと嫌な笑みを浮かべる。
そして、俺を床に押し付けたまま、
「ふぅん?そうなんだ?そんなにこの女が大切なんだ?」
と、俺に語りかけて来た。
「ああ!そうだ!そうなんだよ!」
頭蓋骨が割れてしまうそうな痛みに耐えながら、必死に頷く俺。
「だから、マリアを解放してくれ!俺はどうなってもいい!彼女は……!彼女だけは助けてくれ!」
俺は喉も張り裂けんばかりにそう叫んだ。
と、「いいよ」と少女が微笑む。
「ほ、本当か……?」
少女の言葉に、思わず俺の顔にも笑みが浮かんだ。
すると、次の瞬間、
「なぁ〜んて!嘘!まずはこの女から潰してあげる!」
そう告げるや、マリアを握った拳を高く掲げる少女。
「止めろぉぉ!!止めてくれぇぇ!」
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