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宿魂石――彼女の魂を俺が握っている為、攻撃こそしてこないが、態度はまだまだ敵意がいっぱいの様だ。
(そういえば、俺とマリアは散々こいつに痛めつけられたんだよな……)
そう思うと、少女の宿魂石をこの場で粉々にしてしまいたい衝動に襲われるが、それではマリアは悲しむだろう。
俺はどうにか熱くなりそうな気持ちを落ち着かせると、少女に向き直った。
「で?人に急に攻撃を仕掛けて来たお前は何者なんだ?」
すると、俺の質問にぷいっと横を向き、唇を尖らせる少女。
どうやら、俺の質問に答える気はないらしい。
「ほーぅ?」
俺は早速少女の宿魂石を取り出すと、それを少女の目の前に翳す。
そうして、ポケットからティッシュを取り出すと紙縒りを作り、思い切り石をくすぐった。
「ひぇっ?!きゃはははは!ちょっ!やめっ!やめなさいよ!きゃはっ!きゃはははは!」
やはり、効果は覿面らしい。
この石へ行う行為は全てダイレクトに魂の持ち主である本人へ伝わる様だ。
俺はくすぐり攻撃に倒れ込んで悶絶する少女を見つめながら、そう確信する。
勿論、手は石をくすぐったまま。
「きゃははは!も、やめ!やめてよぉ!死んじゃう!あたし死んじゃうからぁ!きゃはははは!」
気の強い少女の口から降参の言葉が出たことで、俺はくすぐり攻撃をほんの少しマイルドなものにする。
そうして、少女を見据えたまま再度尋ねた。
「なら、教えて貰おうか。お前は何者で、俺の魂を使って何をするつもりだったんだ?言わなきゃ……今度はこの石を炙る!」
「炙るぅ?!いやぁー!バーベキューはいやー!言う!言うから!炙らないでよね!」
俺の炙ると言う言葉が余程効いたのか、慌てて正座をする少女。
彼女は一生懸命に居住まいを正すと、俺を見上げてこう言った。
「あたしの名前は、マリー。マリー・アントワネット。これでも、元はフランス国王ルイ16世の王妃なんだからねっ!」
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