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「……な、んで……?なんでなのよぅ……。私は、ただ……生きたかっただけ。前世で生きられなかった分、長く自由に生きたかった……。ただ生きたかっただけなのに……人間だって……本当は殺したくなかったのに……どうして……。私は……生きていたら、いけない存在なの……?」
昼也に頭を掴まれながらも涙をこぼし、そう呟くマリー。
その言葉に――俺の頭の中では、父や兄から告げられた心無い言葉がまざまざと蘇っていた。
『杉沢家の恥晒しは消えると良い』
(消えると良い、か……)
その言葉に、マリーの涙に、俺の心が激しく震える。
そうして、気づくと――俺はマリーに駆け寄り、彼女の体を抱き抱えていた。
「……あんた……」
涙に濡れた瞳で俺を見上げるマリー。
一方、昼也は舌打ちをしながら俺を睨みつけて来た。
「……あぁ?てめぇ、そいつは害虫……英霊だぞ?お前、人間なのに英霊の味方をすんのか?」
そう告げると同時、恐ろしい速さで吸引され、昼也の手に捕まる俺。
昼也はそんな俺の頭を掴むと、全力で床に叩きつけて来た。
「がはっ……!」
顔面から床に叩きつけられたせいで、激しく眩暈がする。
恐らく、口の中も切ったのだろう、口内は鉄錆の様な血の匂いでいっぱいだった。
でも――それでも俺は、マリーを殺させたくないと思ってしまったのだ。
(きっと、この世界に否定された者同士だからかな……)
くらくらとした頭で、ふとそんなことを考える俺。
俺は、ふらつく足で何とか立ち上がると、自分の能力を起動させた。
「天津甕星!」
と、俺の前の前にあの画面が出現する。
そこには、
「前方の存在は敵性存在ではなく「家族」カテゴリの人間となります。本当に能力を使用しますか?」
そんな文言が記載されていた。
(家族……)
その文言に一瞬揺らぎかける俺の気持ち。
だが、俺は頭を振ってそんな気持ちを追い払うと、意を決して告げた。
「構わない!昼也兄さんの弱点を探し出せ……!」
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