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蛭子神――。
その神は生まれながらに立つことができなかった、或いは足がなかったと言われており、葦(神話によっては楠)で作った船に乗せられ、遠方の島へと流されてしまったのだ。
(解析の結果から、昼也の弱点は神話と全く同じらしい……。つまり、神の能力の弱点というものは神話に出て来る弱点と変わらない――神話から逃れられない存在なのかもしれない)
そう考える俺。
(なら……もしかしたら、炎矢兄や父さんと対峙した時にも、勝機があるかもしれない)
だが、神の弱点が神話通りなのかどうか――まだ確証はない。
なんせ、昼也が最初に戦っている神の能力者なのだから。
(だからこそ、この仮説が真実なのか……俺は実証する必要がある)
俺は、拳を握り締め、兄に向き合った。
そうして、大切な者を守るため……己が不要ではない、無能ではないと証明するため、兄に向けて手を翳す。
そうして、俺は自らの能力を更に発動させた。
「弱点確認。天津甕星!楠で出来た木刀と葦の船は用意出来るか?!」
と、俺の目の前に表示されている画面に「承知いたしました」という文言が現れる。
同時に、何もない空間から目の前に振って来る、楠で出来ているのであろう2本の木刀。
外には葦で出来た小舟が地面の上に鎮座している。
(これで……昼也の弱点である足を攻撃出来れば……!)
そして、あの船に乗せて流してしまえば、取り敢えず昼也の脅威は取り除けるかもしれない。
俺は楠の木刀をぎゅっと握り締めて兄に向き合った。
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