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「うむ。よくぞ参った」
本殿の突き当たり、そこに置かれた豪奢な座布団の上に座った小さな女の子が、俺にそう声をかけて来る。
見た目は5歳位だが、彼女は炎矢兄がスキルの鑑定に来た時から同じ姿だった為、きっとそういう――人知を超えた存在なのだろう。
と、少女が座布団を徐ろに立ち、俺の方へとやって来た。
少女が動くたび、彼女が被っている桜の花をつけた金色の天冠が揺れ、しゃらりしゃらりと軽やかな音を立てる。
彼女は俺の直ぐ目の前に立つと、
「これに手を翳せ」
と告げ、水で満たされた美しい銀の盆を差し出して来た。
「わ、わかりました」
俺は若干少女に気圧されつつも、銀の盆――それを満たす透明な水の上に手を翳す。
と、俄かに水面が光り輝き、文字が浮かび上がって来たではないか。
その文字は――、
「天津甕星」
幼なさの残る……しかしどこか荘厳な声で、文字を読み上げる少女。
踝まである長い黒髪をツインテールに結んでいる少女は、僕を見上げ、こう告げた。
「汝のスキルの名前は「天津甕星」。別名、天香香背男じゃ」
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