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――2135年。
その日、今まで俺達が生きて来た世界は一旦終わりを迎えた。
何故なら、殆どの人間が信じていなかった『あの世』――其処を司る神が、現代を生きる人間達に向けて反乱を巻き起こしたのだ。
なんと彼は……あろうことか、天国と地獄の門を開け、そこで暮らす亡者達を現世に向かって解き放ったのである。
「さぁさぁ、久しぶりに戻った現世よ!」
「今一度、我らの手に世界を取り戻そうぞ!」
狂喜に満ちた表情で、我先にと地上へ降り立つ過去の英雄や偉人達。
厄介なことに、彼らはあの世の神から、生前には持ち得なかった「異能」を与えられていた。
その異能で、過去の英雄達――通称「英霊」達が成したのは、
「なんで英雄なのに人を殺すのよ?!」
「国の為に戦ったんじゃなかったのか?!」
「いやぁぁぁ!来ないで!!」
現世の人間狩りだった。
現世を死者の国とし――自分達の手中にする為、神から与えられた異能で無辜の民を狩っていく英霊達。
しかし、残された人間や他の神もまた、手をこまねいてこの事態を見ているだけではなかった。
英霊達と死の国の神の反乱をおさめる為、神々と人間は一時的に手を結んだのだ。
そうして、死の国を平定し、現世に降り立った全ての死者をあの世へ還すまで、神の力を人間へ貸し与えることを約束したのである。
と、言っても全ての人間が神の力を持てる訳ではない。
国の代表者とその家族や、国家を長年支えて来た大貴族、他にも特権階級の家庭や代々神職であった家系など――選ばれたごく一部の一族のみが神の力を与えられ、英霊達と戦うことが出来たのである。
いつしか――死者達と戦う力を持たない一般の人々は、神の力を行使して戦う者達を見て、こう呼んだ。
「世界を救う勇者だ」
と。
そして、俺の家もまた、神の力を与えられた特別な家の一つだった。
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