ある絶望の、

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たくさんの目が見つめるなか、歌の途中でマイクから離した唇をわななかせて、目を見開いたまま「もう無理」とちいさく呟いた歌姫の弱さを、ぼくらは本当は誰も責めることができなかった。 走っていくバラードは尻すぼみ、ざわめきが段々と伝染していくなかで彼女はステージの上で動かなくなった。 SOSを見せまいとしていた彼女の偽りの強さはもうあとがなかった、ギリギリなんだ、本当はギリギリのところまで来ていたんだ。
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