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日本の真の主君は天皇をおいて他にない。
尊王思想の誕生である。
そもそも征夷大将軍とは朝廷の令外官の一つであり、朝廷から任命される一役職に過ぎない。将軍は天皇の臣下ではないのか。
それまで京都の片隅に御飾りとして長い間放置されていた天皇が、一躍政局を握る存在としてクローズアップされていく。
最初の尊皇攘夷派は水戸藩から生まれた。古事記や日本書紀などの神話を通じて歴史・道徳を教える水戸学の思想が、幕末の気風と結合したのだ。
水戸天狗党なる尊皇攘夷集団も生み出している。
芹沢鴨はその一員であり、彼のプライドの高さはそこから生じている。
「孝明天皇の叡慮(考え)は攘夷である。幕府はそれに従い、条約の破棄と攘夷の実行を速やかにおこなえ」
志士たちはそう訴えた。
土方と近藤は彼らの主張に激しく共感した。
二人は武士ではないため、脱藩という行動は取れないが、天皇の叡慮に従って外国を討ち払うべしとの気概は志士たちに劣らぬ強いものがあった。
二十八歳で天然理心流・四代目を襲名した近藤は、道場での稽古の後、毎日のように幕府の弱腰外交に対する批判と攘夷の実行について門人たちと語り合った。
一度は皆で横浜外人居留地を襲撃する計画まで立てたほどだ。議論の中心には、近藤の他に常に七名の主要メンバーがいた。
土方歳三、沖田総司、山南敬助、永倉新八、原田左之助、籐堂平助、井上源三郎。
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