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 他に生粋の天然理心流育ちとして土方と井上源三郎の二名がいるが、彼らにしても弟子ではない。土方と近藤は義兄弟の関係だし、井上は近藤より五歳も年長のため、近藤は気を使って「源さん」とさん付けで呼んでいる。  他は皆、他流派から流れてきた食客。つまり、客人である。  山南敬助と藤堂平助は千葉周作を開祖とする北辰一刀流。  永倉新八は神道無念流。  原田左之助は種田流槍術を学んだ槍の名手だ。  いずれも武士の家柄であり、農家に生まれた土方・近藤とは明確に出自が異なる。  彼らは試衛館に出入りし、剣の腕では近藤に一目置いているものの、決して彼の弟子や配下だと認識しているわけではない。  八名は近藤を中心とした同志による緩やかな連合体なのだ。  それが後に数々の悲劇を生み出す元凶となるのだが、その事実をまだ彼らは知る由もない。  ただ尊皇攘夷という熱狂の波に乗って、意気揚々と京の地を目指して進んでゆく。  そこにどんな闇や魑魅魍魎(ちみもうりょう)が待ち受けているかも知らずに――。               
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