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「十日間もの間、何をしよったがじゃ、桂さん!」  龍馬は呆れ顔で怒りを炸裂させた。  西郷からこの十日間あまりの経緯を聞き、同盟へ向けた話し合いが一向に進展していないことに驚き、桂の部屋へ怒鳴り込んだのだ。  話し合いが進んでいないどころか、決裂寸前にまで陥っていた。 「坂本さん。私は長州の代表として、もうこれ以上頭を下げるわけにはいかんのです」  西郷が主張する薩長同盟の条件に納得がいかないのだという。 「我々は先の長州征伐において、すでに三家老の首を差し出している。これ以上の新たな処分は到底受け入れられないし、仲間たちにも説明できない」 「譲るところは譲らんと、話は前へ進まんがやき」 「これでは幕府の要求と同じではないか。藩主と世子の隠居など絶対に呑むことはできぬ」  これを受けて龍馬は、今度は西郷の部屋に乗り込んだ。 「西郷どん。交渉っちゅうのは強いもんが折れるのが筋じゃ」 「じゃっで、妥協しておりもす」 「幕府と同じ要求じゃと桂さんは怒りゆうぞ」 「おいどんは、とにかく形だけでも藩主の隠居を呑んでくれと言うちょるんでごわす。そいで戦は回避できる。そんうえで藩主が上京してきた際には、処分の撤回を朝廷に嘆願すると申しておる。そいのどこが不服なんでごわすか」  龍馬はそれを桂に伝える。 「そんな口約束、到底信じられぬ。薩摩は何度我々をたばかってきたことか」  それに対し、西郷は、 「信用できん相手とどうして同盟など結ぼうとするんでごわす。根本が間違うちょる。こちらは長州と手を結ぶ必要などあいもはん」
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