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 明けて、慶応三年(一八六七)一月九日。   弱冠十五歳の新天皇が皇位についた。後の明治天皇である。  孝明天皇とは違い、公武一和への熱い思いがあるわけではない。また攘夷にことさら固執しているわけでもない。  むしろ、突然の皇位継承に戸惑い、右も左も分からず恐怖すら覚えている様子だ。  ようするに、お飾りの天皇である。  さっそく、朝廷内では新天皇の奪い合いが始まった。  薩長はすでに一部公卿を味方につけ、じわじわと朝廷内に勢力を拡大している。  対する徳川慶喜の側も、必死に巻き返しをはかろうと、老中らを差し向けて、根回しを繰り広げる。  より多くの有力公卿を味方につけたほうが、新天皇を我が物とできるのである。
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