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その頃、四侯会議に挫折した薩摩藩は方針を転換し、言論戦から武力倒幕へと舵を切っていた。長州と組んで江戸へ攻めのぼろうというのである。  しかしいきなり挙兵しても、他の諸藩が追随するとはとても思えなかった。朝敵である長州と組んでいるのだから尚更だ。  土佐藩をはじめとした西国諸藩が幕府側についてしまえば、倒幕が失敗に終わるのは目に見えている。  そこで西郷と大久保は一計を案じた。  公家の岩倉具視(いわくらともみ)と組んで、中山忠能(なかやまただやす)正親町三条実愛(おおぎまちさんじょうさねなる)といった天皇の側近を動かし、ひそかに「討幕の密勅(みっちょく)」を得ようとの策謀である。  討幕の密勅さえ手に入れられれば、その瞬間、幕府は朝敵となる。西国諸藩も、逆賊となった幕府に味方するわけにはいかないだろう。  江戸へ攻めのぼる大義名分も立つというものだ。           
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