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誰一人異議を唱える者はいない。
清河が差し出した血判状に全員が次々と署名していく。
もちろん土方、近藤ら試衛館一門も、芹沢率いる天狗党一派も判を押した。
またたく間に全員の血判状が出来上がる。
いや、正確には一人だけ、この時血判を拒否した者がいる。
池田徳太郎である。
彼は清河の殺人罪に連座して牢獄に入れられ、この浪士組参加を機に出獄を許された清河の同志である。主義主張もまったく同じ。その彼がなぜ拒否したのか。
事前に相談がなかったからである。
これほど重要な計画を、なぜ同志である自分に――貴様のために牢獄暮らしを余儀なくされた俺に――打ち明けなかったのか。その怒りだ。近親憎悪といっていいかもしれない。
いずれにせよ、清河八郎による静かなクーデターは、池田一人の脱落を見ただけで、完璧なる成功を収めた。
事前に計画を聞かされていた山岡鉄太郎は驚くことなくこの事態を受け入れた。
しかし取扱役の鵜殿鳩翁は幕府がコケにされたことを看過できず、京に先乗りしている老中の板倉勝静にすぐさまこの事態を報告した。
しかし老中としては、朝廷に上書を奉じると言われては手の出しようがない。幕府と朝廷の地位が逆転しつつある今、清河を止める方法はなかった。
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