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 翌日、清河八郎が学習院に提出した上書は朝廷に受理され、浪士組は朝廷直属の軍隊となる方向へ一歩進んだ。  すなわち、将軍が攘夷実行をすみやかに遂行するのであれば喜んで共に戦うが、攘夷を拒絶するような態度に出れば幕府と決別して独自の道を歩むということだ。  孝明天皇の叡慮(えいりょ)が攘夷にある以上、清河らの行動を表立って非難することは在京幕閣にはできなかった。  この時点で将軍一行の上洛までまだ十日近くある。  自由行動となったその日、土方と近藤は京の町に出た。  観光を兼ねた現状視察といったところだ。  特に三条大橋(さんじょうおおはし)で確かめたいことがあった。  二人にとって京の都は初めてである。沖田も誘ったが、長旅の疲れが抜けないので今日は一日休みたい、と布団に潜り込んで起き出してこない。 「若いくせにだらしねえなあ」  近藤が言い、二人は外へ出る。  門のところで八木邸の主人・八木源之丞と話している山南敬助と藤堂平助に出くわした。  
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