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「お久しぶりです。近藤さん、土方さん」
斎藤は二人を見るや、慌てて居住まいを正し、深々と一礼する。
「元気だったか?」
「はい。お陰さまで」
三人は肩を叩きあって再会を喜び合った。
「近藤さん。斉藤が浪士組に入りたいと言っているんです」
永倉新八が立ち上がり、嬉しそうに言った。
「同じ攘夷戦争を戦うなら、気心の知れた仲間と一緒がいいと思いまして。今からでも、加入できるものでしょうか」
「もちろんだ。大歓迎だよ。なあ」
近藤が皆に賛同を求める。
全員が大きく首肯した。
「数は力だからな。試衛館一門が一人でも増えるのは有難いよ」
原田左之助が言った。
「俺たち、浪士組の中じゃ、結構冷遇されてるからさ」
と永倉。
「そうなんですか?」
「二十数人の子分を引き連れてきたヤクザの親分が小頭で、俺らは近藤さんも含めて全員平隊士だったんだ。ようするに、ヤクザ以下ってことよ」
「え? 浪士組にはヤクザの親分までいるんですか」
斉藤が驚いたように目を丸くした。
「すげえだろ。それが幕府の募集した正規の兵隊だっていうんだからよぉ」
「そんなんで幕府は大丈夫なんですか?」
「それを言っちゃあ、おしめえよ」
永倉が節をつけて滑稽な調子で歌うように言ったものだから、全員がどっと笑った。
「ところで、斉藤」
近藤が改まった調子で語りかける。
「京都は一体どうなってるんだ。ここ数日、歳さんと市中を見回っているんだが、街の様子が明らかに異様だ」
斉藤は苦笑いして、ええ、と首肯した後、
「とにかく凄いことになってますよ」
と言った。
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