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やがて残留浪士組は、京の人々から壬生狼と恐れられるようになる。
土方はそのことに危機感を覚えていた。
これでは何のために京までやって来たのか分からない。
近藤に現状の打開を訴えるが、
「うん、そうだなあ」
と言うばかりで、具体的な行動に移そうとはしない。
近藤もこのままではまずいと内心思いつつも、いったん刷り込まれた芹沢との上下関係を覆すことができず、苦しんでいる様子だ。
また、攘夷の決行がどうなるのか、この先の展望が見通せない状況では、土方としても、街中で暴れる同志らをいさめる言葉を持たないのが率直なところだった。
鬱屈した憤りの感情を、どこかで吐き出させなければやっていられない思いは理解できる。
その意味でも、幕府と朝廷が一致協力して一刻もはやく攘夷路線に立ち戻ってもらわなくては困る。
土方は祈るような気持ちでそう思った。
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