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 新見が顔を真っ赤にした。 「局長が二人いても不都合はありますまい」  土方は、眉一つ動かさず言い返す。 「貴様、水戸藩天狗党出身の芹沢先生を、百姓上がりの田舎道場主と同列に扱う気か!」 「今や水戸藩も試衛館もない。我々は同じ尊皇攘夷の志士です」 「黙れ!」  新見が刀の柄に手をかける。 「待て」  芹沢の叱責が飛んだ。 「しかし」 「座れ」  新見はしぶしぶ膝を折って胡坐をかく。 「いいだろう」  芹沢は穏やかな声でいった。 「近藤さんを局長として認めよう」 「先生!」  新見ら四名が腰を浮かせる。 「ただし」  芹沢は配下の者たちを目で制し、近藤に向き直って続ける。 「この新見錦も局長とする。局長は三名だ」  新見らはそれを聞いて腰を降ろした。  近藤は意見を求めるように隣の土方を見る。 「いいでしょう」  土方は小さく頷いた。 「その代わり、副長はこの土方と山南敬助が務めまする」 「なんだと!」  新見が再び腰を浮かす。 「よかろう」  芹沢が言った。 「先生!」「先生!」  と沸き立つ配下らを尻目に、芹沢は鷹揚な態度で笑みさえ浮かべて続ける。 「俺はもはや序列になど何の興味もない。そんなものにこだわるのは田舎者の百姓だけさ」  それから真剣な表情で近藤を見据える。 「そんなことより近藤さん。会津藩にきちんと談判しようじゃねえか。俺たちは尊皇攘夷の志士だ。夷てきと戦うために結成された兵隊だ。市中見回りなんて岡っ引きみたいな仕事ではなく、攘夷戦の準備をやらせろとな」  近藤はこくりとうなずくと、 「それを会津藩に認めてもらうには、まずこちらが襟を正す必要があります」
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