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「どういう意味だ」
「街中でゆすり・たかりのような犯罪まがいの真似を繰り返すのはやめていただきたい」
「ゆすり・たかりとは失敬な」
芹沢は目を剥いた。
「俺は市中見回りの正当な報酬として、大店から金品を受け取っているだけだ」
「しかし、刀を振りかざして脅迫するのは、あまりに乱暴」
「だったら会津藩に掛け合って、もっと金を分捕ってこい。あんな雀の涙ほどのはした金じゃ、酒も飲めんし、女も抱けんぞ」
芹沢は膝を立て、近藤に詰め寄った。
「それに俺が刀を振りかざして暴れる大店は、どこも異国との貿易で大儲けしているところばかりだ。いいか、近藤さん。民百姓は物価の高騰に苦しみ、貧困にあえぐ者が大勢いる。なのに奴ら大店ときたら、異国との貿易で大儲けして、私腹を肥やしてやがるんだ」
「……」
「俺はね、近藤さん。攘夷ができないというのなら、せめて開国の恩恵を受けて潤ってる糞ったれの守銭奴どもから、金も女も巻き上げてやろうと考えているんだよ。尊攘の同志を取り締まるより、その方がよっぽど尽忠報国だと思うがね。違うかい」
近藤は押し黙っている。
「いいか、近藤さん。会津藩は最初から俺たちに攘夷をやらせる気なんかねえんだ。雀の涙ほどの金を与えて、飼い殺しにしようって腹さ。だが、そうはいくかい。俺たちを浪士だと思って舐めてると、痛い目に遭うってことを教えてやる」
そう言うと憤然と立ち上がり、
「おい、外で飲み直すぞ」
新見らを引き連れ、部屋から去っていった。
残された試衛館一門は、しばらくの間沈黙に包まれた。
やがて沖田が静かに口を開く。
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