監禁

1/23
前へ
/263ページ
次へ

監禁

額から流れ出した汗が顎を伝って床に落ちた。 私の足元の床は私の汗を吸い込み、黒いシミを大きくしていく。 鼻の穴を大きく広げて規則正しく呼吸しているつもりでも、心臓が早鐘のように打つので呼吸も自然と乱れてきてしまう。 私は何度目かの抵抗をしようと身をよじってみたが、椅子の後ろで結ばれたロープは少しも緩む気配を見せない。 自分の鼻息だけが聞こえてくる室内は薄暗く、常夜灯しかつけられていない。 分厚いカーテンはきっちりと閉められていて、今が何時くらいなのかわからない。 正面の壁には無数に写真が貼られていて、ひとつだけ民家が写ったものがある。 2階建ての今では珍しい瓦屋根の家だ。
/263ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加