眠気

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でも、仮に雪菜が怜也じゃなかったとしても、雪菜はやっぱりおかしい。 ここにいることはもうできない。 私は手の甲で涙を拭うと、重たい体を引きずるようにして立ち上がり、部屋の電気をつけた。 クローゼットの中からボストンバッグを引っ張り出す。 こうして荷物をまとめるのも何度目かになる。 私が安心して暮らせる場所なんて本当にあるんだろうかと勘ぐりたくもなってくる。 ブソトンバッグに最初に入れたのは教科書や筆記用具だった。 剛志のところから逃げ出したときには後回しにしてしまい、一番お金がかかったものだ。 そのときには雪菜が手助けしてくれたけれど、今度はその雪菜がいるマンションから逃げるのだ。
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