眠気

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その向こうにはコーヒーカップを持った雪菜が立っている。 淹れたてのコーヒーからは湯気が上がっていた。 「ごめん、入っちゃった」 ちっとも申し訳ないように聞こえないのは、きっと気のせいじゃない。 私は無意識の内にクローゼットへと視線を向けてしまう。 あそこにまとめた荷物があることがバレたら、全部終わってしまう。 どうにかそこから視線を引き剥がして、部屋の中央に座り込んだ。 私の部屋には中央にテーブルがないから、雪菜はカップを直接手渡してきた。 そして私の前に座る。 「ゆ、雪菜の分は?」 「ウチは後で飲むから平気」 「そっか」 頷き、でもカップには口をつけない。
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