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ここで飲まなかったら変に思われるだろうか。
私はそっとカップを口に近づける。
雪菜は穴が空くほどにその様子を見つめてくる。
指先が小刻みに震えて今にもカップを落としそうになってしまう。
「どうしたの? 早く飲んで?」
雪菜に促されて私はギュッと目を閉じた。
飲むしかない……!
そう思ったときだった。
ツルリと指が滑ってカップが落ちたのだ。
転がったカップは横倒しに倒れて、茶色いシミが絨毯に広がっていく。
「あ、ご、ごめん!」
わざとやったわけじゃないけれど、内心ホッとする。
雪菜がこちらを睨みつけてきていたけれど、私は気が付かないふりをしたのだった。
☆☆☆
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