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朝の八時。ダイニングて朝食の準備を始める音がして、アンジェラはふっと目を覚ます。ここに来てすぐの頃、身支度は自分で出来るからと伝えてから、マーナは部屋には来なくなった。
身支度を整えダイニングに向かうと、食べられることのない朝食がテーブルの上に並べられていた。
「おはようございます。朝食の時間でございます」
「おはよう。今日も朝からありがとう。でも……なんだかお腹がいっぱいで……。またこのフルーツだけいただいてもいいかしら?」
普段なら『かしこまりました』と言って下がるのに、今日のマーナはしばらくそこに立ったまま、お皿の上のものを見つめている。
「……お体にさわります。少しでも召し上がってください」
違和感を感じたアンジェラは優しい微笑みを浮かべた。マーナがここまで言うってことはもしかしてーー。
「王様が何か仰ってた?」
マーナの体がピクッと震える。どうやら図星だったようだ。
「新月の儀式も近いですし、体調を崩されては女神様もさぞ残念がるだろうと……」
思わず口の端が引きつった。女神様が残念? 一体どの口がそんなことをほざいているわけ? 可哀想なのは女神様の方なのにーー。
「ありがとう。でも体調は万全だから安心して」
「……承知しました。本日も禊ぎに行かれるのでしょうか?」
「えぇ、女神様に祈りを捧げないといけないから……」
禊ぎという名の、トンネル開通計画だけど。今日も精が出るわ。
「では片付けと清掃をしましたら、また夕食の時刻に参ります」
「いつもごめんなさいね」
アンジェラは果物を手に取ると、わざとゆっくりと歩いて部屋に戻る。出来るだけか弱く見せるのも、かなり労力を使う。
さて、今日は残りのトンネル部分を掘ってしまわないと。そうそう、その前にトーマスとの面会もあったわよね。今日も忙しない一日が過ぎようとしていた。
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