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「終わらせるって……」 「私に降りてくる女神様はね、実はある目的を果たすために新月の晩にやってくるの。さぁ、何のためでしょう⁈」 「いきなりクイズ⁈ そうだなぁ……お、美味しいものを食べに来てる、とか?」 「ブッブー。正解はねーー好きな人を探しに来ているの」 「好きな人? 女神様は地上で恋に堕ちたのかい?」  これはサリー村でも、アンジェラと母親、そして祖母しか知らないことだった。 「そうなの。はるか昔、新月の夜に海で溺れかけたところを助けてくれた青年がいたんですって。女神様は彼に一目惚れ。でもそれを告げることが出来ないまま、別れてしまったらしいの」 「それで、今もその人を探しているのかい? そんなはるか昔のことなのに、果たして今更会えるのだろうか……」  それは途方もない願いで、いつ叶うかもわからないようなものだった。トーマスは遠くを見るような目でアンジェラを見つめたが、彼女には全く悲壮感のようなものは見られない。 「私はね、きっと魂は生まれ変わっていると信じているの。だから女神様が好きな人と再会させてあげたいんだ。そしてそれが叶ったら、女神様を解放してあげると決めてるの」 「解放するって……そんなこと出来るのかい?」 「えぇ、一つだけあるの。すごく簡単なことよ。私がサリー村以外の人と結婚すればいいだけの話」 「……け、結婚⁈」 「そう。この力は同族婚にのみ受け継がれるの。だから私が部族外の人と結婚すればいい話でしょ?」  あまりにもあっけらかんと話すので、トーマスは不思議と重い内容には感じられなかった。だからだろうか、突然吹き出し、笑いが止まらなくなる。 「確かにそうだね! ただそれだけの話だ!」 「でもそれには協力してくれる人が必要なのよ。おわかり?」 「あぁ、もちろん協力させてもらうよ。さてアンジー、君はいつその計画を実行するつもりなのかな?」  二人はお互いを見つめ、ニヤッと笑った。 「三日後、新月の占いの儀式を終えた後に決行するわ」 「承知した。私も仲間に連絡を入れることにしよう」  なんて心強い仲間が出来たのかしらーーもう不安だけじゃない。アンジェラの中で、脱走後の未来が明るく輝き始めた。
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