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* * * *  湯浴みを済ませたアンジェラは、マーナたちの手によって身なりを整えられていく。ただ占いをするだけなのに、肩が広く開いた白いシフォンのドレス、髪を一つにまとめられ、生花や宝石で飾られていく様子に、毎度のこと違和感を覚える。  準備が整い、大広間に誘導されていく間もメイドたちに囲まれ、アンジェラが自由に動ける隙はなかった。  どうにかしてトムに連絡を入れる方法はないかしらーーしかしなす術はなく、あっという間に大広間の扉の前に到着する。  王様に会うのは一ヶ月ぶりかしら。占い以外では互いに会う用事はないし、村育ちのアンジェラにとってはあの威圧的な空気感が好きではなかった。  ここにいたら、ずっとあの王の言いなりにならなければいけないーーそう思った瞬間、体に震えが走る。そんなのって生きてると言えるのだろうか。死んだも同然の生き方をするくらいなら、出来るところまでやった方が私らしくていいんじゃないかしらーー。  トムはこの宮殿の外にも塀があって、敷地からは出られないと言った。でもよく考えたら、じゃない! それなら私がここから出る可能性だってあるはずーーアンジェラは拳を握りしめる。  生きるか死ぬか。死んだ気分で生きるより、賭けに出た方がずっとマシよ。どちらにせよ、決行は占いの後。まずはこの時間を乗り越えなければならない。  アンジェラが顔を上げると、大きな音を立てて大広間の扉が開いた。普段は入室が許されていない大広間は、数々のシャンデリアが明るく輝き、豪奢な家具や装飾によって彩られている。  王が入る場所だけ着飾られた宮殿ーー今の私と同じね。見せかけだけの富の象徴。反吐が出るわ。
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