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 中へ入ると、最奥の一段上がった場所に王と王妃、そしてアンジェラと同じくらいの年齢の三人の王子が、体の大きさに合わない巨大なサイズの椅子に腰を下ろしていた。五人は物珍しいものを見るような目でアンジェラを見下ろしている。  そして壁際には、王の側近や騎士たちが並んで立っていた。  いつもこうして、まるで珍獣を見るかの目で人々に見られるのだ。占いをするという立場ではアンジェラの方が上の立場であるはずが、同じ人間とは思えない心持ちになっていく。 「王様にご挨拶申し上げます」 「うむ、顔を上げよ」  (いか)つい顔と体、長く伸ばした髭。それに人を見下すような目は眼光が鋭く、攻撃性すら感じた。ようやく慣れてきたものの、長く顔を合わせたくはなかった。 「また今宵も新月を迎えることが出来た。さぁ、私もそんなに暇ではないのでな。今すぐに女神を呼び出して占いを始めるのだ」  語尾の強さに、思わず体が震えた。こんな時に『どうして薬を盛ったのですか?』なんて聞いたら、一瞬で殺されてしまいそうだ。  あぁ、でも女神様がいれば、王は私を殺さないかもしれないーーそんな甘い考えが頭をよぎった時だった。王様の目がギロリと動き、細めた目でアンジェラを凝視したのだ。 「あぁ、そうだ。占いの前に、そなたに確認しておきたいことがあったのだ。歳をとると、忘れっぽくて困る」  何を聞かれるのかと困惑し、冷や汗が垂れる。息が詰まるのを感じながら、ゴクリと唾を飲み込んだ。 「なんでしょうか……」 「うむ。最近王宮の周りにちょこまかと動き回るネズミがおるのだが……そなたの宮殿にそのネズミが現れていないか心配になってな」  ネズミーーそれがトーマスを指しているのだということは、容易に想像がついた。これはただの疑惑だろうか。それとも事実に基づく確認なのか、アンジェラにはわからなかった。
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