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「ネズミですか……こちらの宮殿は塀に囲まれついますゆえ、動物は一切やって来ません」  それでも彼のことを明かすわけにはいかないーーそう思ったアンジェラは、王の言葉をそのまま受け取り、わざと惚けて見せた。しかしそれが気に障ったのか、王の表情が一瞬険しくなる。  嘘だとバレたのか、それとも私がそのままの返答をしたからイラついているのかーーどちらにせよ、王の反応次第だった。 「ほう……やって来ないと申すのだな」 「はい。おっしゃる通りでございます」  アンジェラが答えた途端、王の顔色が明らかに怒りのこもったものに変わる。 「予知姫を拘束せよ」 「な、何故ですか⁈」  鎧をつけた兵士たちがアンジェラを囲むと、一人の兵士が彼女の後ろに回って腕を掴んだ。拘束される意味がわからなかったアンジェラは慌てた。 「昨夜そなたは部屋のカーテンを全て閉めたそうだな。今まで一度もそんなことはしたことがないのに、何故昨日に限ってそんなことをしたのだ」 「それは……!」  やはり監視されていたんだ……でもどこから? 敷地内に誰かがいたというの? それじゃあトムのことや、トンネルのこともバレているということーー⁈ 「何故知っているのか……気になるか?」 「……気になどなりません。たまたまカーテンを閉めただけのこと。深い意味はございません!」 「嘘をつくな! 貴様に自由を与えた私が間違っていたようだ。今日の占いは中止だ。そやつを地下牢に連れて行け!」  あぁ、終わったーーこれでもう逃げ出すチャンスはなくなった。でも村の人たちがもし逃亡に成功していたら、それはそれで成功だし、トーマスの存在を隠すことが出来たんだから、それについても一安心だった。  背後から腕を掴まれ、仕方なく立ち上がる。兵士に背中を押されながら、アンジェラは大広間の入口のドアを通り抜ける。数名の兵士とともに、歩き慣れた廊下を進んでいくと、アンジェラと兵士の足音が響き渡った。  ここから宮殿に向かい、一生を地下牢で過ごすのねーー諦めの感情とともに、体の力が抜けていく。エントランスに到着し、扉が開いたーーその時だった。  突然宮殿の明かりが全て消え、人々が混乱する声が聞こえてくる。驚いて振り返ろうとしたアンジェラだったが、後ろにいた兵士に背中を強く押されてしまう。 「前に進むんだ! それから目の前の馬車に飛び乗れ!」  彼の言葉の意味がわからず、とにかく言われるがまま止めてあった馬車へと飛び込んだ。
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