エピローグ

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エピローグ

 それから丸一日馬を飛ばして、ようやく国境を越えてハーラン国へと辿り着いた。  途中でトーマスの部下たちとも合流したが、事態をハーラン国の王に伝えるために休憩すらも惜しみ、アンジェラたちよりも早く走り去ってしまった。  森の高台に登ると、そこからはアンジェラが幼少期を過ごしたサリー村が見えた。きっと今なら夕食の準備のため忙しい時間のはずなのに、火を使用している様子も見受けられず、閑散とした空気が流れているように見えた。 「あそこがサリー村か……。立ち寄りたかったかい?」 「いえ、大丈夫。行こうと思えば、いつでも行けるし」  十歳までとはいえ、生まれ育った村。そこを捨てることになってしまったけど、代わりに自由を取り戻した。 「そういえば、ずっと気になっていたことがあるんだけど」 「なんだい?」  アンジェラは相手の様子を観察するかのように、目を細めてトーマスを見つめる。 「あなた、でしょう?」  するとトーマスはクスッと笑った。出会ったから初めて見た少年のような笑顔に、アンジェラは思わずドキッとしてしまう。 「バレていたのか。やはり君は頭がいい」 「やっぱりね。ずっと気になっていたのよ。カーテンなんて日によって開いてる日もあれば、閉めてる日だってある。でも初めて聞いた情報こそが正解だものね」  アンジェラの部屋を見ていた人は誰もいなかった。でもトーマスがそれをあたかものだと報告すれば、疑惑の目はアンジェラに向くのだ。 「アンジーが三日も眠らされて、昨日が新月の日だというのは、私もあの時に知ったんだ。だから慌てて策を考えた。厳重警戒の中で君を安全に外に出す方法ーー全てのドアを難なく抜けるためには、アンジーには疑惑の目を向けられることが必要だったんだ」 「もしその場で打ち首にでもなったらどうするつもりだったのよ」 「そのために灯りを消す準備をしていたんじゃないか。まぁ最終的には、時間稼ぎのために使ったけどね」  なるほど。彼の中では全て計算された出来事だったわけかーーきっと戦場にいた時は、相当頭のキレる人材だったに違いない。 「終わり良ければ全て良しだよ。ではそろそろハーランの王都に向かおうか」  トーマスがそう言うと、アンジェラは首を横に振った。 「いえ、私は行かないわ」  その答えを聞くや否や、トーマスは思い切り吹き出したので、アンジェラは驚いて体をビクッと震わせる。
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