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「黙って。抵抗はあなたのためにならない」  体を大きく震わせ、アンジェラは恐る恐る、ゆっくりと振り返る。するとそこには、金髪の若い男が怪訝な表情を浮かべて立っていた。  アンジェラはグッと口を閉ざす。自分の部屋に勝手に侵入してきた男相手に、ちょっとでもイケメンだと思ってしまった自分が恥ずかしい。アンジェラは気を取り直して、男を睨みつける。 「というか、ここは私の部屋よ! 乙女の部屋に勝手に入ってきて、あなた一体何者?」  その言葉が胸に刺さったのか、男は申し訳なさそうに頭を下げた。 「すまない。ここに予知姫がいると聞いていたのに、それらしき人物は見当たらないし、代わりにやけに幼い少女がいたものだから……」  アンジェラはポカンと口を開けた。何こいつ、言ってることが意味わかんないんだけど。なんだかムカついてきたーー男を睨みつけ、首元をぐいっと掴んだ。 「目の前にいるじゃない」  男は戸惑ったように口籠る。 「いや、しかし……以前見た風貌と雲泥の差だし」 「雲泥⁈ いやいや、失礼すぎでしょ!」 「それに噂では"病弱で儚く、触ったら壊れてしまいそうなくらい繊細な姫"だと聞いていたから……」 「……あら、どう見たって、噂通りの姫が目の前にいるじゃない」 「……あんな裸同然の格好で、汗だくで土を掘り続ける女が予知姫? いやいや、それはあり得ないだろう」 「ん? ちょっと待って。あなたまさか……私が土を掘るところを見ていたの⁈」 「あぁ、怪しい奴がいるなと……」  そう言うや否や、男は腰から担当を取り出した途端、剣先をアンジェラの喉元に突き付けた。 「さぁ、言うんだ。本物の予知姫はどこにいる。すぐに吐けば、命は助けてやろう」  なんて素早い動きなの⁈ この身のこなし、只者ではないことは容易に想像がついた。  このままいても埒があかない。まずは自分が予知姫であることを信じさせなければーー。
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