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 アンジェラは部屋のカーテンを全て閉めると、ベッドに座った。 「窓辺には近寄らない方がいいわ。いつどこで見られているかわからないし」 「わかった」  トーマスはドアのそばに立ち、腕を組んでからアンジェラの方を向いた。 「つまりあなたは、モライが私の占いで和平条約を撤回する時期を窺っていると思ったわけね。それで? 私を拉致しようとでもしたわけ?」  彼は苦い顔で俯くと、ため息をつく。 「……否定はしない」 「じゃああなたの国に連れて行かれた私は、今度はそっちの国に軟禁されるんだ。そしてサリー村は壊滅。最悪の結末ね」 「壊滅? それはどういうことなんだ?」 「私が何故抵抗もせずにここに軟禁されていると思っているの? 好きであの王の元に仕えているとでも?」  トーマスはハッとしたように目を見開いたかと思うと、みるみるうちに顔が青ざめていく。 「まさか……村を楯に取られているのか?」 「えぇ、そういうこと。何? 外の世界では私が自分からノコノコ王の元にやってきたとでも思われてるの?」 「あぁ、宮殿で大切にされているともっぱらの評判だ」  自分の評判を落とさないよう、私も村も監視して、余計なことを言う輩は処分しているんでしょうねーーでもそんなことにもう屈しないために、六年かけて準備してきているのだ。 「あのっ……予知姫様に聞きたいことあるのだが……」  アンジェラは突然吹き出すと、腹を抱えて笑い出した。 「あのねぇ、私は村の出身よ。"姫"なんてタイプじゃないの。私に幻想を抱かせたい王族が勝手に姫ってつけただけ。どう見たって、姫じゃないでしょ? あなただってさっきそう言ったものねぇ」 「それは……申し訳ないと思っている……」 「ならいいけど。私はアンジェラよ。アンジーって呼んで」  一瞬トーマスの張り詰めていた空気が緩んだような気がしたが、すぐにまた真顔になる。  彼は確か第五王子と言っていた。それにしては責任感が強い気がした。
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