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「ではアンジー、教えてほしい。モライは、和平条約のことについて占いで何かを求めたりしていないだろうか。それとも、我が国を貶めるようなことを尋ねていないだろうか」
彼の言葉を聞き、アンジェラは重たい表情で首を横に振った。
「それは……ごめんなさい、わからないの。実は私、占いをしている間の記憶がないのよ」
「記憶が……ない?」
「えぇ、そう。私たちの村は女神による加護を受け、未来を占うことが出来るのは知ってるでしょ? ただそれが出来るのは女神を体に降ろすことができる一人だけ。その女神が体に降りている間は、私自身も眠りについたような状態になってしまうの」
その間はまるで小さな箱に入れられたかのように、周りとのコミュニケーションは全て遮断されてしまう。
「では……私たちはどうすることも出来ないのか……! モライの動向を、ビクビクしながら指を加えて見ているしか出来ないなんて……!」
なんとなくわかる。彼は自分の国が大好きで、愛しているのだ。だからなんとしてでも守りたいと思うに違いない。
本音を言えば、彼を信じていいのかまだ定かではなかったが、嘘でここまで必死になれたら、それはそれですごいことだと思う。
その時、アンジェラの中である考えが浮かんだ。国を守りたいトーマスと、村を守りたいアンジェラ。アンジェラとサリー村がこの国と王から逃れることが出来れば、両者にとって最良の結果になるのではないかーー。
「ねぇトム、いい提案があるんだけど」
「……突然の愛称呼びに少々戸惑いを隠せないのだが」
「まぁまぁ、そういう細かいことは気にしないで。私たち、手を組まない? あなたに損はさせないわ。どう?」
これは彼にしか話せないし、彼ならばやってくれる気もした。アンジェラのやけに勝ち誇った表情から、トーマスは彼女が何か新しい選択肢を思いついたのだと感じ取る。ようやく差し込んだ希望の光に、彼の顔に明るくなるのが見えた。
「……詳しく話を聞かせてくれ」
トーマスの瞳がきらりと光る。手応えを感じたアンジェラは、思わず不敵な笑みを浮かべた。
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