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ラグヤ王国 試しの塔街区
あれから3ヶ月――こちらで言うところの、季節1つ分が過ぎた。
こちらの世界では、夜空に3つの衛星、ロナ・ルタ・ラルタが明るく輝いている。
しかし、暦等はあまり日本と変わりないようだ。
ただし、1日は12刻で表されているし、1年は季節4つ分と記されている。
少しずつ表記が違うので、戸惑うことも多い。
小夜はまず、最小限の生活スペースのみ領域内に創造し、クロと住み始めた。
残りの塔部分は、塔石板を読込み、買い出しを兼ねて塔街区で情報収集をしてから、と思い、まだ手をつけていない。
けれども、小夜はクロと共に、懸命に前に進もうとしていた。
「クロ、塔主が尊重され、保護されるのは、本当だったみたいだね」
やや明るい表情で声をかけ、小夜は馴染みとなりつつある、塔街区を歩いていく。
恐る恐る始めた塔街区での買出しだったが、今は知り合いも増え、自由に動ける範囲も広がり、自信もついてきた小夜である。
そんな時、小夜に明るく声がかかった。
「いらっしゃい! 塔主見習いのお嬢ちゃん、今日は良いのが入ってるんだ。ぜひ、のぞいていってくれよな!」
景気の良い声かけに、小夜は顔を綻ばせた。
ここ最近顔馴染みとなった、店主だ。
そのまま店のオススメ品をいくつか購入する。
塔街区に住む人々は皆、乱立する様々な試しの塔から多大なる恩恵を受けている。
だからか、まだ仮の塔主、塔主見習いとも呼ばれる小夜にも皆、とても親切だ。
塔主は、左右どちらかの手の甲に印を持つ。
そのため、塔の外に出る場合、一目で分かる塔主専用の手袋を着用な上、各塔の紋章を入れた指輪するのが通例となる。
また、小夜のように、塔主就任の儀より季節4つ分が過ぎるまでは、仮の塔主、塔主見習いと呼ばれる。
いわゆる塔の運営をするための準備期間があるのだ。
その期間中、見習いは塔主専用の手袋の上に、仮証である指輪をするのも通例。
つまり、塔主見習いも一目瞭然なのだ。
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