日常が壊れる時

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日常が壊れる時

 大事なクロが健康でいるためには、朝夕の散歩は欠かせない。  小夜は高校で運動部に入るのを止めた。運動は朝夕の、クロとの散歩で十分だからだ。  それでも、高校生活に手を抜くつもりはない。勉強も友達関係も精一杯、頑張っている。  入学早々、級友から先月の卒業式で、卒業生は定員数からかなりの人数が減っていた、と聞き、慄いた。  流石の進学校。  せっかく憧れの黒峰高校に入れたのだ。ぜひ胸を張って卒業したい。  そんなわけで、今日も川辺をクロと、日課となりつつあるランニング。その後はのんびりと散歩し、気づけば高校近くまで歩いていた。 「こんな小路、あったかな?」  ふと心惹かれる小路を発見し、クロと共に足を踏み入れる。  そのまま進み、T字路を何気なく右へ曲がった途端――なんとも言い難い浮遊感と衝撃、そして全身に痛みを感じ、思わず目を閉じた。 (何? 事故った?! クロは?!)  パニックになりつつも探れば、足元には変わらないクロの気配がある。  低く唸る、クロの声。  それを頼りに小夜は体を動かし、クロを抱え込んだ。  そのうちに痛みは、徐々に左手の甲へと集まってくる。  身体中の痛みが集約され、痛みが熱さに感じられる頃、唐突に全てが収まり、静寂に包まれる。  小夜が恐る恐る目を開けると、辺りの景色は一変していた。
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