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塔主候補 2
ドーラの目が光り、一層勧誘は激しくなった。
聞けば、この世界において塔主という者は地位高く、誉れ高いものらしい。
その塔の中では一国一城の主として君臨し、塔を離れたとしても決して害されず、尊重されるという。
最も塔主は塔から長い時間離れることが出来ないので、離れたとしても塔街区の所用や買い物程度の外出になるそうだ。
それでも塔の中にずっと閉じこめられるわけではない、と言葉を尽くして塔主の利点を並べてくる。
その他にも、こちらの世界――ラグヤ王国には東の海辺地域に、試しの塔街区という特殊な区域が定められていること。
そこには、凡そ百もの塔と塔主達が在ること。
その三分の一程が迷いしものの塔主であること。
さらには、儀式で塔主になりさえすれば、王国での立場は保証され、保護されること。
眷属クロも同様なこと。
以上の事柄がドーラの口から、立て板に水のように述べられる。
そして、衝撃と情報過多で目を回しそうな小夜を見て、最後に心配気につけ加えられた。
「こちらに来たばかりで酷なことも承知しております。ただ印持ちである迷いしものには、どうしても早急の対応、そして決断が不可欠なのです。期限は明日の朝まで……どうか、どうか賢明なるご決断を」
ドーラは一礼し、小夜とクロを客室へ案内して去って行った。
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