黒珠

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黒珠

 案内された一室のベッド上で、小夜は膝を抱えて泣いていた。  隣に寄り添うクロの身体が温かい。    与えられたばかりの衝撃的な情報が、小夜の頭の中をグルグルと回る。  もう家には戻れない。  そこには真実の響きがあった。  何故かソレが小夜には分かった。  ならば、どうするか。  ドーラの言を信じるならば、塔主一択だ。  けれども、思考を奪うかのような性急さと心の奥底で渦巻く危機感が、小夜の決断を迷わせる。 「クロ、私どうしたら良いの?」  泣きながら眠った翌日。  小夜は為すすべもなく、儀式の間へと連れてこられた。  決して乱暴ではないが、断固とした態度の神兵達に囲まれ、逃げることも逆らうことも許されない。  小夜とて違和感は感じても、まるで勝手がわからぬ異世界で、何も手助けなく、いきなりクロと生きていけるとは思っていない。  物語でよく読んだ、召喚ものではないのだ。彼らにとって、小夜は世界を跨いでしまった迷子――迷いしもの。今時点では、何の義理も責任もない筈。  いきなり放り出されそうな、怖さもある。  だから、小夜は半ば押し切られるように、そして、ただ直感的にもうここは自分が折れるしかないことを察し、そこで小さく頷いた。  その途端、周りにホッとした空気が流れ、ドーラが穏やか表情で前に出てくる。  「賢明な判断に痛み入ります。では、これを」  小夜が左手に黒珠を持たされ、ドーラが呪を唱えた瞬間。  眩い白光とともに、小夜の身に黒珠と繋がれた感覚が走った。
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