油性ペン

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油性ペン

いじめをする人間は、いじめではなく遊んでやっていると思っていて、相手を見下し、相手が嫌がっても、平然とちょっかいをかける。 その日は、卒業式であり、これで、いじめていたクラスメイトとやっと離れられると思ってホッとしていたが、今日でお別れだからと、記念に別れの言葉を書いてやるよと言い出していじめっ子連中が俺の受け取った卒業アルバムを取り上げて、油性ペンで、キモイ、バイバイ、とか、お前なんか死んだ方が世のためなど、好き勝手に書き込み、俺の手元に帰って来た時は、俺の卒業アルバムは落書きだらけのひどいものになっていた。新しいものと取り換えてもらうのは無理だろうと思い、俺は黙ってそれを手に家に帰った。 そして、同じように油性ペンを持ち、卒業アルバムで俺の顔を塗りつぶすように落書きされたクラスの集合写真に、俺も、自分で他のクラスメイトに落書きを始めた。風俗嬢の紹介写真みたいに、他のクラスメイトの顔全員にくっきりと黒で目線を引いてやった。 そしたら、翌日、俺を除くクラス全員が目の前が真っ暗になったと騒ぎになった。それは俺へのいじめを気づかずに放置していた担任も同様で、病院で調べてもらうと、眼球の内側が、マジックで塗りつぶされたように全員真っ黒で、一人だけ、俺のせいじゃないかと連絡してきた奴がいたが、俺は、正直に他のクラスメイトの顔にマジックで落書きしたと答え、しかも、油性ペンで書いたから、落ちないとも伝えた。他にも俺のせいだと知って激怒した奴がいたようだが、真っ暗で何も見えない状態では、俺に復讐できるわけもなく、俺は、消えない落書きだらけの卒業アルバムをいまも大事に持っている。
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