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「それゴスロリ?似合ってるね」
見せられた写真の中にいる君を褒めたはずなのに、君からの返答は想像とは違った。
「これは!黒ロリ!ゴスロリじゃ!ない!」
かくして、君と僕との初デートはロリィタブランドさんハシゴコースと決まってしまった。もっとほら、情緒というか…初めてなんだぜ?せっかくならあの可愛い服着て遊園地とか、そっちのが良くね?
それとな〜く伝えてはみたが、「ロリィタの隣で歩くならロリィタ文化を知らないとね」と一刀両断された。いや、なんというか、納得できるけど……。怒った彼女は怖いです。
可愛い服を着た君の写真を見せられながら、僕は君の話を必死に聞く。事前学習らしい。これはクラロリ。ふむふむ。クラシカルなロリィタファッションの略なのか。他にも色々教えてくれているがそれしかわからん。
「それでゴスロリ!これはかな~り誤解されてることが多い!」
お、僕が間違えたっぽいやつ。さっと見せられた写真には、ロザリオを首にかけた黒いロングワンピースを着た彼女。やはりスカートは広がっている。確かパニエといったか。そして隣にスワイプされて、次はフリルとリボンいっぱいの黒い膝丈ワンピース。こちらのスカートはお椀型にがっつりふんわり広がっている。
「これ、どっちがゴスロリだと思う?」
さっさっとスワイプを繰り返しながら君が言う。これは……間違えたらやばいやつ?僕まだ全然わかんないんだけど。
「え?両方?」
「はい違う」
違った。
「最初がゴスロリで、次が黒ロリね」
君はゴスロリの方の画像を見せる。
「ゴスロリはゴシック・アンド・ロリィタの略。退廃的な美しさをテーマにしててね。十字架とか、ドラキュラとか、コウモリとかのモチーフが多いかな」
さっさっと黒や赤のドレスで着飾った君が画面上に現れる。なるほど。十字架。たしかに。
「それでね、黒ロリは甘ロリの一種」
はて?甘ロリとは。
「ふりふりフリルにリボンにレース。甘くて可愛らしいデザインのロリィタ服が甘ロリって呼ばれてね、黒い甘ロリが黒ロリなの」
なるほどなるほど。たしかにリボンたっぷりだ。ハートモチーフや動物モチーフも多く、たしかにゴスロリが『美しい』だとすると黒ロリは『かわいい』だ。
じっと画面を見つめる僕をじっと見つめる君。なんだかいたたまれない。
「な、なんでしょう…」
恐る恐る聞いてみると、君は不敵に笑って言った。
「デートのとき、何着てほしい?」
僕はじっと君の顔を見つめて言う。答えは一つしかない。
「僕を王子様にしてくれるなら何でも」
「っそういうとこ……」
…うつむかれた。失敗した?あ、ロリィタの基礎も知らなかったやつに王子様なんて……。てか、僕なかなか恥ずかしいこと言った?!
「ごめ、えっと、」
「もうっ!とびっきり可愛く決めるんだから!抵抗ないなら皇子系ロリィタ貸そうか?!」
また新しいロリィタが出てきた……。軽く調べてみるとなるほど。パンツスタイルか。ていうか服を貸すなんて、僕もだいぶ君の信頼を得ることができているようだ。
「今お金あるし、デートのとき見てみようかな、ブランドさん」
ぽつりと呟くと、君はグッドサインを作ってキメ顔で言う。
「全身コーディネートしてあげる」
「それ10万軽く超えるって言ってたよね?!多分今はメインのパンツぐらいしか買えないよ」
「大丈夫それ以外私が出すから」
「いや申し訳ないって!」
僕のプリンセスの申し出を丁重にお断りする。膨れ顔のプリンセスと全身ロリィタデートをするのも時間の問題だろう。
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