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「ソファで良い」 「そうー?まぁ仕方ないか」 抱きかかえられるのがよほど癪なのだろう。 ソファは優月の妥協案なのだと分かる。 ソファに座って背もたれに背中を預けた優月に、苦笑した。 いやせめて横になれよ。 とはいえ体は限界のようで彼が目を閉じる。 解熱剤には鎮痛剤も含まれているから、頭痛なんかも少しは緩和されれば良いけど。 そもそも熱なんてなくても殆ど眠らないからな、優月は。 安心して眠れる日がいつか来れば良いけれど。 寝ついたところで、そっと体を横に倒してやる。 これくらいなら許されるだろう。 どうせ30分や眠れても1時間で目覚めるだろうから今のうちに薬やら飲み物やら色々買いに行くかな。 早々と支度をして家を出る。 冷える日だ。 暖房は効いているが、ソファで眠っているし寒くはないだろうか。 出かける時は内心いつも心配になる。 いない間に体調が悪くならないかとか、 出て行ったりしないかとか、 気が強そうだけど必死に自分を守っているだけにも見えるから、何かの拍子に衝動的に自殺したりしないかとか、気に病むことだらけだ。 優月は今お金も住む場所もないし大丈夫だと信じたい。 同じ施設の被害者であるソラのことは優月も気にしているようだから、ソラのところへ行っていると思ってくれれば勝手な行動はできないと思う。 入院後、半ば強引に優月を引き取ることにした時も相当嫌がっていたが、ソラが一緒のマンションであることを伝えることでやっと了承してくれた。 “あいつ平気なの”とたまにソラの容体を聞いてくるし、優月なりに心配はしているのだと思う。 研修期間、施設にいたのは2週間ほどではあったが数回優月のことは見かけた。 その頃からクマが酷くて、いつも大人を睨んで、小さな体で必死に抵抗していた。 俺自身自分以外どうでも良い性格だと思っていたはずなのに、こいつの気が休まる瞬間ってあるのかなと思えばいつの間にか苦しく感じていた。 優月は、ソラとは違って怪我の具合はそこまで酷くない。 殴られたあとはあるが、爪を剥がされたりもしていないし、切り傷もソラ程ではない。 優月は痛みよりもセックスの方がよほど苦手だからだと職員が話していた。 撮られた動画は見ていないけれど、確かに優月は気持ちよくさせられるくらいなら殺される方がマシとまで思いそうな性格だ。 ため息を吐いて車に乗り込むと、エンジンをかけた。 とりあえず早く買い物を済ませて帰ってやろう。 できるだけ長く眠ってくれるように祈りながら、俺は車を走らせた。
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