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俺も服を着替え、ソラを抱えてソファへと向かう。 ドライヤーを探したが見当たらない。 まさかこの家ドライヤーもないのか。 買わないとなんて思いながらソファに座り、ソラを膝に乗せて後ろから抱えた。 包むように正面から毛布をかける。  改めて、成人男性と思えば本当に小さいなと思う。 ソラの身長はおそらく150センチちょっとくらい、体重も40キロあるかどうかというくらいだろうか。 俺とは30センチくらい身長差がありそうだ。 ソラの力が抜けて俺に寄りかかる。 寝るのかと思って覗き込むと、目は開いていた。 「寒くない?」 「……こんな温かいこと、なかった」 そんなわけないだろうとは思う。 暖房入れたとはいえまだ暖かくなりきってはいないし、真冬だし、冷水浴びたばかりだし。 「りとは、ぽかぽかだ」 それとも、単純な温度の話ではないのかな。 「誰かにこうして抱きしめられたりしたことってあんの?」 「おしり、いれられたりする時、たまにあったよ」 子どもみたいな体と拙い喋り方から出てきた言葉があまりにも対照的で、理解するのに時間がかかる。 そういえば性被害も受けていたんだっけ。 確か裏ルートでAV販売していたとか。 こいつの動画が裏で出回っているのだと思えば苛々して仕方がない。 とことんクズだ。 「りとは、僕にいれないの?」 「しない」 「どうして?皆してたのに?」 「それは好きな人同士が思いやって、お互いに気持ちよくなる行為だから」 「そうなの。痛いだけだったけどな……」 恥じらいも苦悩も何も感じられない。 ただの世間話のようにソラが話すから、それがどれだけ日常化されていたかが読み取れて辛い。 言葉に詰まり、テレビをつける。 アニメが見られるサイトに登録すると、ほのぼのとした日常系のアニメを流した。 海外の人がよくアニメから日本語を習得すると言うように、言葉が拙いソラももう少し喋れるようになれば良いと思う。 生活の殆どが空を見たり玄関でまるで誰かを待っているように過ごしていたのも気になっていた。 何かやりたいことや楽しいと思えることが増えると良い。 ソラは特に嫌がったり飽きたりすることもなく、俺の腕の中でじっとアニメを見ていた。 表情が変わらないから、面白いと思っているかは分からないけれど。 アニメは主人公が家族や友達と楽しく過ごす生活を描いたもので、 普通の家族も学校も知らないソラにとっては、理解はできないのかもしれない。 「ニコニコだ」 「そうだね」 それでも、食い入るように見ているから、退屈ではないのだと思う。 3話の途中くらいまで見たあたりだろうか。 ソラが穏やかに寝息を立てる。 体も随分と温まった。 先ほど眠ってすぐ運ぶと起きてしまったので、しばらくこのままの姿勢で待つことにする。 頭をそっと撫でると、そこからシャンプーの良い匂いがした。 15分くらい経ってから、ベッドへと運んだ。 眠ったソラに優しく毛布をかける。 たくさん眠れると良いけれど。 今後どうなっていくかは分からないし問題も山積みだけれど、 とにもかくにも、俺とソラの不思議な同居生活が始まった。
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