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それから父は警察に事情を説明。 父自身が脅されていたことや実際に犯罪に関わってはいないこと、大病を患っており治療が必要なこともあったのか、逮捕されることはなかったようだ。 それも、罪を償わせてすらもらえなかったと父は後悔していた。 それから2ヶ月程入院したソラを迎えに行き、2週間ほど共に過ごしたと書かれていた。 その期間、父はもう手の施しようがないから自宅で過ごすという期間だったようだ。 看取り期間に入り、再度入院する。 この頃には、母ともよく会っていたと記されていた。 そして日記の終わりの方には、俺への言葉も綴られていた。 『理都。君が会ってくれるということを妻に聞いた。 そこまではなんとか死なないように頑張ろうと思う。 まさか最期に理都の顔が見られるとは思っていなかった。 どうなっているのだろうか。 きっと恨まれているだろうが、私は君のことを忘れたことはなかった。 2番のことで、とんでもないことを頼むと思う。 もし困るようであれば、椎名樹という男に連絡してくれ。 本当に最期にはなるが、どうか、幸せになってくれ』 涙が出そうになり、ぐっと唇を噛み締めた。 俺は何も知らくて、父に優しい言葉一つかけられなかった。 “でかくなったなぁ” 今更父の言葉と弱々しい笑顔が頭に浮かんだ。 もう亡くなっているのに、殆ど記憶もないのだから、情なんか湧くはずがないのに。 「……りと、りと?」 いつの間に起きたのか、眠っていたソラが目を開けてベッドを降り、這うように俺のそばへやってくる。 ソラはここ3日間、熱が下がらなかった。 体が冷えたのも原因だろう。 それでも彼は苦しいなどと訴えることもない。 「あぁ、起きた?」 「りと、痛い?どこか痛い?」 「え?」 「痛そうな顔、してる」 頬に触れられ、そっと撫でられる。 その手は熱くて、まだ熱は下がりきっていないようだ。 「これ、みなと、よくしてくれた。 痛いの少し良くなるでしょ?」 頬を撫でる手が温かい。 まるで記憶にもない父に撫でられているような気持ちにさえなる。 ソラの頬に触れ、同じように優しく撫でた。 「頭、痛くないか?」 「殴られてないのに?」 「……もう殴られないよ」 ふいに人の体温が欲しくなって抱きしめた。 ソラの力が抜け、体を預けてくれる。 「りと、変」 「そう?」 「うん、痛いことしないし、なんか知らない感覚になる。 みなとみたい」 「……まぁ、家族だからな、一応」 ソラの体が熱い。 早く熱下がってほしいな。 何も言わないけど食べる量も減っているし、呼吸も苦しそうだし、しんどいはずだ。
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