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風呂場まで行けば、ソラはぽてぽてと後ろをついてくる。
ソラは、あまり上手には歩けない。
窓くらいはあったのだろうが、日光を浴びる機会が極端に少なかったから骨の成長が妨げられたと樹が言っていた。
加えて体力もないし、怪我もあるし、家の中でもたまに這うようにして移動するから、歩くのはまだまだ課題なのかもしれない。
脱衣所へ行くと懸命に服を脱ごうとするソラを見て、これは疲れるだろうなと思う。
指先が痛むのか、庇いながらなんとか脱ごうとしていた。
父の服なので大きめのサイズなことが功を奏している。
服を少し引っ張って介助してやれば比較的簡単に脱ぐことができた。
これくらいのことで楽になるなら、毎回手伝ってやるのも良さそうだ。
ソラの体は、改めて見れば本当に酷いものだった。
透き通るような白い肌に青あざや切り傷が残っている。
「お水、たくさん」
浴槽に張ったお湯を見て、ソラが呟く。
俺も服を脱いで指で温度を確認すると、洗面器にお湯を掬った。
「熱い?冷たい?」
瞬きが少し早い。表情はさほど変わらないが身構えているようにも見える。
熱いのも冷たいのも経験があるのかもと思えば、どこまでもこいつを傷つけた奴が許せない。
「熱くもないし冷たくもないよ」
腕を握ってやり、手首のあたりにそっとお湯をかけた。
一瞬目を瞑ったソラが、きょとんと目を丸くする。
「……あったかい」
「うん、入るよ」
先に浴槽に入り、ソラを支えて湯船へと入れる。
「痛くない?」
「変、痛くないの」
真冬なのに温度を高くしなかったのは、傷が滲みると思ったからだ。
上がった時に寒くないかとも思ったが、暖房も入れているし、きっと大丈夫だろう。
「湯船につかるのも気持ち良いだろ。そのまま入ってろ、先に洗う」
洗いながら横目で見ると、ソラは不思議そうにお湯をすくったり、手を動かしてばしゃばしゃと跳ねさせたりしていた。
まるで遊んでいるみたいだ、と思う。
あまり長風呂させるのも良くないので、洗い終えるとすぐにソラを呼んで椅子に座らせた。
ソラの髪にシャンプーをつけ泡立てると、襟足が少し長い彼の髪は柔らかくて、綺麗に整っていることがよく分かる。
父さんがこんな器用に切れるイメージはないから、切ってあげたとすれば樹かな、なんてぼんやりと考える。
「りとが僕の洗うの?」
「泡が滲みて指痛いだろ」
人の手で髪を洗われるのは気持ちが良いのか、ソラが穏やかに目を閉じる。
ソラにとって風呂は嫌なものでしかないだろうから、少しでもそれが払拭できると良い。
髪を洗い流すと、ボディーソープをつけて体へと手を滑らせた。
傷があるので手で洗う方が痛みは緩和されるだろう。
「……ん」
ふいに、ソラが甘い声をあげた。
その声は普段の拙い喋り方とは裏腹、やけに大人びていて思わず眉を寄せた。
見れば、彼の小ぶりなものは芯を持ち始めている。
思えばこいつは以前まで無理矢理性的なことをされて射精させられていたのだ。
体が覚えさせられていても何ら不思議ではない。
「……りと」
少し頬を赤らめて俺の顔を見上げてくる姿に、やばいなと思う。
こんな子どもじみた奴の、何がこんなに官能的だと言うんだ。
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