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こんな風に抱きかかえられて眠ったことを知れば、酷く睨まれそうだと思う。 抱いたまま座り込み優月の背中に毛布をかけた。 眠っていると子どものように見える。 優月は中学生までは学校にも行っていたしソラほど成長が妨げられているわけではないが、それでも施設に行ってからの数年は外に出ていないから、肌は白いし細身だ。 俺が長身なこともあるが、中々体格差がある。 はぁはぁと荒い息を繰り返しながら苦しそうに顔を歪める姿に、もう少し頼ってくれれば体楽にしてあげるのになと思う。 医者が聞いて呆れる。 こんな状態なのに、何もしてやれない。 そのままの体制で20分程経ったところで、優月が目を覚まし激しく体を起こす。 壁よりは眠れたかもしれないが、それでも睡眠時間としては短すぎる。 「こらこら、そんな急に動いたらダメでしょー」 「てめぇ、何して……っ」 案の定目眩と頭痛が酷いのか倒れ込みそうになるのを支えた。 「触んな!」 「支えなかったら床に打ちつけられてたでしょ」 「別に良いだろそれで。 何?優しいフリして飼って、それで金で売るんだ」 捨てられた経験があるからこそのトラウマ。 そんな風に思われるのは仕方ないかもしれないけれど、心外だなぁ。 「売らないけどねぇ」 「優しいフリされんの気色悪い」 「はいはい。何でも良いけど薬飲まない? 結構自分が思ってるより高熱よ?」 「嫌だ」 あーあ。 本当に扱いが難しい。 水も飲ませたいし、薬も飲ませたいし、休ませたいのに何も上手く行かない。 冷蔵庫へ向かってペットボトルの水を取り出す。 鞄から解熱剤を取ると優月の元へと歩いた。 「……っ飲まないからな」 優月が後ずさる。 声が震えており、睨んではいるものの怯えが見える。 施設では媚薬なんかも使われていたみたいだから、薬にやたらと怯えるのはまぁ分かるけれど。 怖がらせたいわけでもないし、優しくしたい気持ちもあるのに、何で上手くいかないかな。 「飲もうねー」 「ふざけんな、やめろ」 唇が乾いており、水分が足りていないことがうかがえる。 腕を握って引くと、体を抱え、顎を手で押さえた。 「……っう」 「口開けて」 唇を噛み締めて頑なに口を開けようとしない優月の唇に触れる。 そのままガリっと指を噛まれて、本当に威勢が良いなと思う。 「……あ」 俺の指に血が滲んで、優月が少しだけたじろいだ。 傷をつけたことで俺が怒って殴ったりするとでも思ったのか、目には恐怖の色がうつり、身構えている。 別に指噛まれたくらいで何もしないけど。 「口開けないならお尻から入れるよ」 「……っ最低」 優月が脅しに屈して、震える口を開ける。 錠剤を入れて水を流し込んでやれば、やっとのことで飲み込んだ。 「これでいいんだろ、離れろ」 「よくできました」 頭にポンポンと触れると、それすらも気に食わないようで俺の手を叩く。 「ついでにベッド行こうねー。 もし壁で寝るならまた抱っこで寝かすからね?」 「……ほんと、ムカつく、お前」 本当は脅したいわけでもないんだけど。 本当に上手く行かないな。
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