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ソラが戻ってきて手を伸ばす。
樹にも持っていきたそうなので、ほんの少しコーヒーの量を減らしてから持たせてあげた。
樹のグラスはなみなみに注がれていたから、そのまま運ばせようものなら溢してしまっていただろう。
前にソラは”僕には何ができるの”と尋ねてきたことがあったくらいだし、手伝えていることが嬉しいのかな。
そう思うと、ソラのことが愛おしくなる。
「おいしく、のんでね」
「ソラー!ありがとうー!」
グラスを受け取り机に置いた樹が、ソラをぎゅっと抱きしめる。
「わ」
ソラが小さく声を上げると、樹が更に引き寄せた。
「ソラはちっちゃいねー」
何だこの感情。
何か、モヤモヤする。
俺は慌てて残りのグラスを机に置くと、ソラの腕を引いて引き寄せた。
「えーなに?りっちゃんもしかして妬いた?」
「……なわけないだろ。ソラ、ソファで見ようね」
「りと、うん、見るの」
樹が頬杖をつきながらやたら楽しそうにこちらを見ている。
「なんかりっちゃん、ソラを見る目とか声のかけ方とかすげぇ優しくなってる気がすんだけど」
確かにソラが樹に抱きしめられていたのは、何となく面白くない感じはした。
優しい言葉かけになっているというのも事実だろう。
けれどそれが嫉妬だなんてとても考えづらいしあり得ない。
確かにソラのことはほっとけないし、可愛いと思う瞬間もあるし、
たくさん寝て欲しいとか食べて欲しいとか、
嬉しいと思って欲しいとか頼って欲しいとか……色々思うようになってきてはいるけれど。
恋愛感情で好きとか、そういうのとは違うはずだろ。
一度射精を手伝ったりはしたが、あれもソラがその気になったのに抜き方知らなかったからっていうだけだし……。
「りと、いつもみたいに、おとなり」
“いつもみたい”という言葉に反応してか、樹がにやにやと笑う。
「優月ー俺もりっちゃんとソラみたいに優月の隣で一緒に見たいよー」
「ばっかじゃねぇの」
「俺がソラ抱きしめた時優月妬いた?」
「ソラが可哀想だとは思った」
「えーそっち?
まぁソラは守ってやりたい弟って感じだなぁ」
樹と優月が言い合っているのを横目に、ため息を吐いてソラの隣に座れば、ソラは目を細めて俺を見上げてくる。
「りと、きた」
表情は変わらないがどこか嬉しそうだ。
こういう姿に心臓がやたら鼓動を早めるのは知らないフリをする。
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