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裏切りはどこまでも
私は今日、身近な人達から裏切られた。
恋人から。
「おまえさぁ、自分の顔を鏡で見ろよ。そんな顔で、俺と釣り合う訳がないだろうが」
親友から。
「よしくん、そんな言い方しちゃ可哀そうだよ?初めから私に告白してくれれば、和泉を傷付けなかったのに…」
私に配慮する言葉を吐いているが、その奥には侮蔑が滲む。
二人は、私の心を容赦なく抉ってくる。
何?私が悪いの?
付き合おうと言ってくれたのは、あなただよね?
それなのに…。
「僅かでも、俺と付き合ってたって事実だけで、有難く思って欲しいよ…。俺にとっては苦行だったけどな」
「やだ、よしくん。駄目だってば…」
見下すように吐き捨てる、恋人だと思っていた人。
くすくすと醜く笑う、親友だと思っていた人。
「じゃあな。恨むならおまえ自身を恨めよ?」
「ばいばい、和泉」
私の世界からまず、恋人と親友がいなくなった。
それからどうやって帰ったか分からない。
気付いたら自宅の前だった。
安らげるはずの自宅も、私には地獄だ。
ここでも私は、裏切られる。
母親から。
「和泉〜、遅いじゃな~い。見て~♪」
上機嫌の母親の周りには、所謂ブランドのショッパーがいくつも。
「何これ!! まさか、また借金したの!?」
「だって、欲しかったんだもん」
毎日が、こんな事の繰り返し。
買い物依存。
そして、アルコール依存。
父親は、そんな母親を私に押し付けて逃げた。
妹は、こんな惨状を見限って、上手に逃げた。
何もかもを、押し付けられた。
これも立派な裏切りだ。
私は、様々な枷を嵌められ、沈みゆく泥沼で藻掻いていた。
呆然と目の前の惨状に固まっていると、
「ねえ和泉、お腹空いた。お寿司食べたい」
当たり前のように呟かれ、ポキリと心が折れた。
私は、そのまま玄関を出ると、ただ現実から離れたい一心で、
何も考えずに走って逃げた。
そして、
逃げた先で、私が安らげる居場所を見つけた。
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