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ラッキーナンバーは7です
嫌い。
私は全部が嫌い。
お父さんの髪が薄いのも、お母さんが太ってるのも、親譲りの一重で全然可愛くない顔も。
家がお金持ちじゃないのも、弟が生意気なのも、成績が中の下なのも、運動神経鈍いのも全部嫌い。
この前だって体育の時間、バレーボール頭で受けるとか、有り得ない。
何でああいう時、女の子って『ちょっと抜けてる感じ、可愛いよ』とか嘘言うの?
そんなわけないじゃん。
ただの運動音痴だもん。
嫌い。
運の悪さも、いつもこうやってうじうじ悩んでばかりなのも全部嫌い。
占いも嫌い。
今日一番ラッキーな星座はふたご座だって。ラッキーナンバー7って、なによ? 嘘じゃん。今日は7日だけどなんにもいいことなんかないもん。ラッキーカラーのエメラルドも意味わかんない。
こんな風に毎日がただ過ぎてくだけなのも、それを黙って受け入れるしかない自分も、みんな嫌い。
委員会で遅くなった放課後、急に降り出した雨。
傘なんか持ってないよ。友達はみんな帰っちゃった。
ほら、全然いいことなんかない。
きっとこのまま、私は永遠にツイてない人生を歩むに違いないんだ、って気がした。そんなこと考えてたら、どんどん気が滅入ってくる
ああ、ほんと、どうしようもなく、最悪……。
「どうしたの?」
昇降口で急に声を掛けられた。
「もしかして、傘……ない?」
えっと、誰だっけ? 確か一組の子。ひょろっと背の高い、男の子。見たことはあるけど、話したことは……多分ない……よね?
「あ、うん。雨で……傘なくて」
知らない子に話し掛けられて、ちょっとしどろもどろになった。お喋りが下手な自分も、嫌い。
「これ、」
「え?」
緑色の折り畳み傘を差し出され、戸惑っていると、
「返すのはいつでもいいからさ」
「でも……、」
「あ、いきなり知らない男子に傘借りるのキモイ? ごめん、でも好きな子が雨に濡れるの嫌だから」
「……へっ? す……き? ええっ?」
急にとんでもないこと言われて頭がバグる。
「俺、一組の本田七瀬です。ずっと気になってました。よかったら……その、お友達からでいいんで!」
すごく恥ずかしそうに、でもすごく真剣な眼差しで私を見る、彼。
「え? え? なんで……? 私?」
私が嫌いな私を、この人は好きって言った!?
「理由? 説明してあげる。あと五分くれれば俺がなんで君を好きになったかわかると思う。……あ、じゃあ……一緒に帰ろうか」
してやったり、みたいな顔でそう言われ、私は黙ったまま小さく頷く。
そんな二人の後ろ姿を見送るみたいに、最終下校を告げる19時の鐘が鳴った――。
了
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